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【地酒解体新書第15回】若者の思う地酒の定義って何?

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地酒ファン必見のおもしろ雑学コンテンツ。 知っているとちょっと使える地酒よもやま話&雑学集。 地酒について、知っていそうで知らなかったこと・知らなかったけど人に聞けなかったこと・知ってたけど「ほんとに!?」と疑っていたものなどまわりの人にちょっと話したくなる地酒にまつわる雑学をを地酒博士が徹底レクチャー!これを読んで、地酒の雑学王になろう!

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地域の酒だから、地酒なのだろうか?


さて、前回に続いて「会員の方からの質問」から考える、ゼミナール第2弾!

今回ご紹介するのは、「本物の地酒とは、何をもって言うのか」を勉強テーマにしているB大学生さんです。

大学の卒論のテーマに地酒を取り上げ、改めて考えてみると「地酒の定義って何だ」という、ご質問と言うか、投げかけがありました。

なるほど、これはしかり!杯を前にして「これは、土佐の辛口の地酒だ」とか、「これは地元米を使っていて、味に幅のある越後の地酒なんだ」などと薀蓄の多いツウにも、いざこの単純な質問を投げてみると、頭をひねったり、言葉を濁したりする方も多いようです。

地酒とはなんぞや?

これを定義するってぇのは難しそうですね。難しいというか、なかなか答えを絞り込めない問題です。

「地酒とは何か?」の答え方として、「生産量が一万石以下」とか「複数の都道府県に出荷しない」とか、 「原材料を地域限定している」とかの基準があれば良いのですが、地酒の定義って特にはないのです。

要は「万人の口に合えばナショナルブランド(NB)。地域の味になっていれば地酒」となるのですが、 地域の味に合っているから県内出荷比率が高いのか、単に地域外に出荷しないだけ、していないだけ、できていないだけ、なのかの区別 がつきません。

また、千葉県の酒蔵が県外(東京)への出荷が多いからと言って、地酒とは呼べないことになって良のかなど、定義にしようとすると矛盾が生じます。

結果的に「味質の目標を何においているか、誰の好みに合わせようとしているか、何の食材に合う味になっているか」などの、蔵元の思想の問題になってしまいます。

地元の素材を使うから、地酒なの?


さて、B大学生さんは、地酒の定義として二つの案件を揚げています。

まずひとつは、「材料が地元で獲れた、地域性あふれる素材であること」

これについても、事例的に考察すると、単に言い切れないようです。 例えば、1.博多の明太子(タラコと唐辛子)の材料は博多産か、2.タイ米で清酒を造ったら、それは日本酒か、3.それは日本酒ではない‥と言うなら、山梨でワインは作れないのかなどの問題に行き着きます。

こうなってくると、近頃うるさい「本物嗜好」ともからみあってきそうです。

「本物嗜好」って言い出すと、これが手づくりにつながり、またまた別 のジャンルへと地酒の定義が広がって、堂堂めぐりですね。

次に、2案目「地元でしか手に入らない、ワンカップの普通酒を地酒と言えるか」については、カップ酒が依然価格訴求型の域から脱出できない市場性と、一升瓶を中心としてきた酒蔵の小容量 充填設備への投資とのコスト問題になります。

大体「ワンカップ」というフレーズは、「正露丸(大鵬薬品)」や「宅急便(クロネコヤマト)」と同様に、普通 名詞化して一般に使われていますが、灘の「大関」さんの登録商標です。

「カップ酒」という言葉は多分自由に使えると思いますが、これは古い世代の方には「コップ酒」を連想させるようです。

もっとも、この「容器に対するイメージ」ってのは刻々変化しているようで、若い世代はカップ酒に抵抗は無く‥っていうかコップ酒なんて知らんモンなぁ。

北杜夫なんぞは若かりし頃は粗悪な合成酒しか飲めず、たまに「清酒」を飲むときは、「これで酔わなきゃ損」ってなもんで屋台の外で飛んだり跳ねたりして飲んだそうですが、あれでコーヒーの違いが判るんだろーか。

地酒は、イメージからも作られる?


閑話休題、若い世代の容器に対するイメージの話ですが、清酒の場合には御銚子徳利に悪いノンベのイメージを持っていた世代を経て、最近の若い世代では一升壜の方が連想するイメージは悪いそうです。何でかなぁ。オジサンには分からん。

多分、一升壜が見慣れていた時には普通の保存容器に見えていたのに、最近の若い人は普段は家庭で見なくなったから。ホームストックの保存容器としてではなく、ヘビーユーザー用のノンベ専用容器に見えているのかなぁ。

そんなイメージの一升瓶に、太っとい筆字でドッカーンと銘柄を書いてたら、若い人には化石的かつ文化財的なアイテムなのかも。

この辺は容器そのものへの意識の変化というか、見た目で受ける印象と容器に対する知識が変わってきているのかもしれません。

では地方で売られている地酒の普通酒のカップ酒は何だと言えば、これは小容量容器の輸送コストと充填設備の投資の問題だけだと思います。

と言うより、その前段として、カップ酒に対するニーズというか、誰がどんな時に必要としている容器サイズなのかという市場性なのかもしれません。

小生の会社では、吟醸酒や純米酒などの小容量容器で飲み比べを家庭で演出できる企画なんかも以前には考えたのですが、なかなか売れませんでした。

ニーズはあると思うのですが、時期が早すぎたのかなぁ。 機能性飲料の例もあるし、もう一回チャレンジすっかな。

でもって、地酒の定義は結局どーなったんだってお話しは、市場(売り場)の変化で何がどう変わるのかという話から見た方が分かり易そうな気がするので、次回につづきます。これは、チョット難しいぞ。

地酒解体新書について


本連載は、国分グループ本社株式会社と全国の有力地酒蔵元との協力により運営して運営する「地酒蔵元会」ホームページ内に掲載されている記事を転載しております。解体新書の他にも地酒に関する様々な情報が記載されておりますので、ぜひアクセスしてみてくださいね。
※地酒解体新書は2008年に公開された記事となります。現在とは異なる表記がある場合もございますのでご了承ください。


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