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【地酒解体新書第11回】家系によって嗜む酒と呑む酒の違いがある!?

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これからの日本酒の品評ってこうなるかも。


マエ彼から上司まで使いこなして、いずこなりとも飲みに行き、グルメ雑誌に載っている店や料理はほとんど制覇しているにも拘わらず、気の合った仲間とは気取らずに飲むA子さん。
ただし気の合った仲間とジーパンで飲みに行くにも、その日は何処の店に行くのかは、仲間を待たせていようが自分で選ぶことを譲りません。
選択基準は雰囲気が全てで、アルコールは「その場に合って」いることが最優先です。
男性陣には店を選ぶ権利は無く、かつ、よしんば権利を与えられたとしても知識がありません。
そんな仲間に混じって、「飲み」の時にはいつも一緒のB子さん。
硬い家庭に育ち楚々とした美人なのですが、飲む量は半端でなく、かつ乱れません。
しかも一升飲んでも味覚は衰えず、「この味は瀬戸内の小魚に合うお酒ね」とか「飲み越した後に戻る香りが焼き醤油にピッタリね」なんて言ってます。

実はB子さんは、ワインスクールに通っていた時の友人と飲み歩いているうちに日本酒にのめり込んだ経歴があり、「このシャトーが玉栄って品種で、絞っただけのはヌーボーが抜群」なんて使う言葉は、とても日本酒の評価とは思えません。
さらに、「一寸スカンク臭っぽい藁臭すっけど、きれいな仕上げでブルー系に合うね」なんて言いながらチーズで吟醸酒を嗜みます。
翻訳すると、「この酒蔵の醸造した日本酒のうち、原料米に玉栄を使った純米原酒は新酒しぼりたてが美味しく、多少はヒネ香っぽく日向臭がしてもブルーチーズに合う吟醸酒だね」ということを表現しているらしいのですが、どーなんすかねー、こーゆーの。
多分これからは一番正しい表現なんだろーなー、キット。

お酒の好きな嫁・姑の相乗効果


ところで、このB子さんが何故こんなに味覚が鋭いのかというと、これはどうもお母さんの影響が大きいようです。
と言うのもB子さんの家庭は前橋で二代続く開業医でお父さんは毎晩のように晩酌をし、かつ、厳格な家庭の割にはお母さんも一緒に飲むので、B子さんも小さい頃からお母さんのお手伝いをして「酒の肴」を作っていました。
問題は、その味付け論議にあり、別棟とはいえ同居しているお姑母さんとB子さんのお母さんとは生まれも育ちも全く違うのに味付けについては意見が合い、お医者さんであるB子さんのお父さん(C男さん)とは、全然好みが合わなかったのです。

そもそも飲み方からして全く違い、お姑母さん(B子さんのお父さんの母親)も酒豪なのですが、B子さんのお母さんはそれ以上で、酒一升の後でビールをチェイサー替わりに飲みます。
一方お父さんはイワユル嗜むタイプで、根っからの酒好きなのですが肴にもコダワリがあり、冷凍食品をレンジでチンなんてーのは一切許してくれません。
「ウチ(当家)は代々嫁が苦労する家系なのかねぇ」と、お姑母さんがB子さんのお母さんに話し掛けます。
「私のとき(当時)も死んだ亭主が煩わしくてねぇ。しかも亭主の家系は代々が広島の出だったこともあるけど私(お姑母さん)の義母は会津藩の名家からお嫁にきた方で、それはもう厳しい方でねぇ。三度三度お膳を用意するのが嫁としての私の務めだったのよ。C男の好みが頑固なのも、あの当時から私が一所懸命に我が家の味付けに合わせて作ったからねぇ。父親譲りというより厳しかった義母の味を引き継いでいるのよ。私なんかは「指一本酒一升」の家庭に育ったから、そんなに肴には拘らないので、今のあなた(B子さんのお母さん)の苦労が良く分かりますよ。あなただって私と同じように沢山飲むから、肴なんてテキトーで良いのにと思うでしょう?」
などと、アドバイスなのか同情なのか単なる愚痴(昔話)なのか、はたまた遠回しな皮肉なのかは分かりませんが、B子さんのお母さんとお姑母さんは表面上は仲良しです。

するとB子さんのお母さん、

「それはもう、お姑母様の頃は大変だったでしょうし、ご苦労されたことでしょうねぇ。でもお姑母様、確かに私もお酒は沢山いただきますけど、量を(沢山)飲むから肴はテキトーってものでもございませんことよ。私は高知の母から皿鉢を仕込まれておりますので」

などと、これまたケナゲなのか自慢なのか、はたまた遠回しな日頃のウップン晴らしなのか、この辺は渡鬼(某TVドラマ)の世界で、とてもこれ以上コメントできませんが、でもB子さんチの家族構成は見えてきました。この家族構成がどのようにB子さんの味覚の鋭さを育んだのか、次回の予告としてB子さんのコメントで今回を締めます。

「そうなのよ。私が日本酒に興味を持ったのも、元はと言えばワインからだけど、ブルゴーニュとボルドーって地域の違いとメルローとかXXXXXXXなんかの品種の違いが分かると、シャトー間の違いってば腕の違いってなもんで、何となく理解できた気がしてたのよ。ヴィンテージまでは覚えてらんないしさ。ところが日本酒なんかは、どの酒蔵も山田錦とかみんなで同んなじ米を使ってて、みんなでYK35とか叫んでて、その割には普段飲んでるお酒は何でこんなに味が違うのかってか、美味い酒って定義は無いンかいって思ったときに我が家の晩酌談義を思い出したのよ。だって今夜の酒は美味いネェって会話が家族の中で意見が分かれて、その意見も日によって献立次第で変わるんだよ。何なんだよコレって感じでサ。にも拘わらず鑑評会出品酒なんてーのはどれ取ったって同なじよーなお酒でさ。こりゃ何じゃいって飲み比べていてハマっちゃったのよ」

地酒解体新書について


本連載は、国分グループ本社株式会社と全国の有力地酒蔵元との協力により運営して運営する「地酒蔵元会」ホームページ内に掲載されている記事を転載しております。解体新書の他にも地酒に関する様々な情報が記載されておりますので、ぜひアクセスしてみてくださいね。
※地酒解体新書は2008年に公開された記事となります。現在とは異なる表記がある場合もございますのでご了承ください。


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