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新しい喫食提案 チョコレートとワインのマリアージュ

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本記事は㈱フードニュース、㈱山星屋のオウンドメディア「お菓子と、わたし」、国分グループ本社㈱の同「ぐるっぱ」の合同企画です。ライターウジリィが選定委員会のメンバーとして参加しており、3社からお菓子とお酒の相性について様々な観点からご提案出来ればと考えています。なお内容についてはフードニュース社HPからの転載となります。フードニュース社HP:https://foodnews-inc.jp/

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お菓子とワインのマリアージュ選定委員会


Y(山星屋代表):「お菓子と、わたし」編集部 兼 ライター

K(国分グループ本社代表):酒類全般&チェアリング愛好家。日本ソムリエ協会(J.S.A.)ソムリエ/SAKE DIPLOMA

F(フードニュース代表):弊誌編集部。ワイン&音楽愛好家。日本ソムリエ協会(J.S.A.)ワインエキスパート、J.S.A.ワイン検定ブロンズクラス・シルバークラス認定講師

セオリー覆す“新発見”がいろいろ 裾野広げる提案可能なチョコレート


従来の“セオリー”に囚われず、お菓子とワインの新しい組み合わせを探っていく不定期連載企画の4回目。今回は無垢チョコレートとワインのマリアージュを試してみた。市場のデータによると、チョコレートカテゴリーは前年に比べ「やや苦戦している」(山星屋調べ)ものの、スイーツ×ワインの“王道”として語られることの多いチョコとワインの組み合わせについては「お菓子と、わたし」(㈱山星屋)や「ぐるっぱ」(国分グループ本社㈱)の担当者も認識を新たにする傾向が浮かび上がり、飲食店へのオファーやシーン設定に関する具体的な提案が続出。高カカオ商品を含む国内・輸入の無垢チョコを幅広く揃え、当選定委員会で再検証し、深掘りするにしたがい“目から鱗”の発見が出てくる、手応えの実感できる座談会になった。

今回用意した「チョコレート」のご紹介

01.プレミアムガーナ ダークミルク(ロッテ)
02.カレ・ド・ショコラ<カカオ70>(森永製菓)
03.ザ・チョコレート ベネズエラカカオ70(明治)
04.リンツ エクセレンス85%カカオ(六甲バター)
05.ミルカチョコレート アルペンミルク(エヌアイエスフーズサービス)
06.ハーシー ミルクチョコレート キングサイズ(鈴商)
07.ゴディバタブレット ミルクチョコレート(ゴディバジャパン)
08.キャドバリー デイリーミルク(エヌアイエスフーズサービス)

今回用意した「ワイン」のご紹介

今回、チョコレートとのマリアージュを試した5本のワイン。左から・・・
A:フュルストフォンメッテルニヒ リースリング(白・発泡)
B:リンデマンズ ジェントルマンズ・コレクション シャルドネ(白)
C:KWV カフェ・カルチャー(赤)
D:アポシック・レッド(赤)
E:ファミリア・パスクア パッシメント ロッソ(赤)

A:フュルストフォンメッテルニヒ リースリング(白・発泡)
ドイツ アルコール度12.5%
銘醸地ワイン「シュロス・ヨハニスベルク」によるドイツ産ブドウ100%のスパークリング。柑橘の爽やかな酸味と黄桃のニュアンスが感じられ、きめ細かい泡がフレッシュな果実味を広げる

B:リンデマンズ ジェントルマンズ・コレクション シャルドネ(白)
オーストラリア アルコール度13%
オーク樽によるナッティな風味とピーチやネクタリンのアロマが広がり、クリーミーな口当たりとメロウな余韻のバランスが印象的な、やや辛口。単体でも素晴らしい飲み応えが堪能できる

C:KWV カフェ・カルチャー(赤)
南アフリカ アルコール度14%
特殊製法による華やかなコーヒーの香りと、南ア独自のブドウ種・ピノタージュ由来のブラックベリーやカシスのアロマが心地好いフルボディ。モカやカカオの芳しい香りが印象的な個性派

D:アポシック・レッド(赤)
アメリカ(カリフォルニア) アルコール度13.5%
熟したブラックベリーやプラムの芳醇な香りが広がり、滑らかな口当たりのタンニンが心地好いフルボディ。しっかりとしたコクと、バニラやモカのアロマが漂う余韻が印象的

E:ファミリア・パスクア パッシメント ロッソ(赤)
イタリア アルコール度14%
プラムやカシスといった黒系果実のアロマが特徴のフルボディ。ブドウの陰干製法により、濃厚で凝縮した果実の甘みと、ふくよかで丸みのあるタンニン、ほのかなスパイスのニュアンスが広がる

セオリーとは異なるマリアージュ発見!ポイントは“余韻”や“残り香”などの後味


F:先月号に引き続いて、4回目のマリアージュ座談会企画ですが、今回は菓子とワインのマリアージュとしては“王道”の「チョコレート」がテーマです。一般的には「赤ワイン×チョコレート」の組み合わせが、セオリーとして定着しています。チョコ商品は幅が広く、スナック系のものやチョコをかけたもの、さまざまなフレーバーのフィリングを入れたセンターインなどがありますが、今回はシンプルにチョコレートだけで構成されている、いわゆる“無垢チョコ”に絞って、ワインとの組み合わせを再検証してみたいと思います。
用意したワインは、やや甘めのドイツ産スパークリングや、樽香が心地好いオーストラリアの白ワイン、さらには産地やブドウ品種は異なりながらも、フルボディで“しっかりしたコク”という共通点を持つ赤ワイン3種の計5本と、バラエティ豊かなラインアップ。改めてチョコレートとワインのマリアージュを試してみて、みなさんはどのような印象を持ちましたでしょうか。

Y:意外だったのは、白ワイン(B)やスパークリングワイン(A)が日本の「プレミアムガーナ ダークミルク」(1)や「カレ・ド・ショコラ<カカオ70>」(2)、「ザ・チョコレートベネズエラカカオ70」(3)と合う印象が強かったことで、一方、赤ワイン(C)~(E)は甘めの輸入チョコの「ミルカチョコレート アルペンミルク」(5)~「キャドバリー デイリーミルク」(8)が合うように感じました。特にオーストラリアの白(B)は、どのチョコとも違和感ありませんでした。また(1)や「ゴディバタブレット ミルクチョコレート」(7)、(8)の3種は口溶けがよく、どのワインとも合う印象でした。ベスト・マリアージュは、意外性も含めスパークリングの(A)と(7)のチョコで、ワインが少し甘めだったので、チョコの甘さと重なり合った感じです。

K:私も(B)が印象的で、シャルドネ種の白ワインと甘いチョコが合ったのが意外で、目から鱗でした。また、スパークリング(A)と「ミルカチョコレート アルペンミルク」(5)の組み合わせにも可能性を感じました。

F:私は(1)~(3)の国内チョコと(5)~(8)の輸入チョコで印象が分かれていて、甘みが感じられる輸入チョコレートは、今回試したすべての赤ワインと無理なく馴染みました。
また、もう1つ感じたのは、チョコレートの口の中での溶け感が大切だということ。口中の体温で温まっていくことによって、ワインとチョコが自然に混じり合い、まろやかに溶け合っていく印象が強かったです。

Y:今回のマリアージュで実感したのは、チョコレートは余韻と合わせやすいということです。口に入れてチョコが溶けてきた瞬間にワインを合わせると心地好いマリアージュになることが多いという点が“気づき”でした。

K:例えば「ミルクチョコレート×赤ワイン」の組み合わせを想定したとき、見た目の第1印象ではなく味わい。口の中で時間をかけることを意識して飲むと、ワインがあまり得意でない方にも、新たな気づきを感じてもらえそうです。

F:やはりワインは余韻に大切な味わいがあり、口中で温められて甘やかさや丸い香りが広がる瞬間と、チョコが溶け始めて、まろやかさやコクのある甘さが馴染み合うところが醍醐味ですので、後味というか“余韻”や“残り香”とのシンクロ具合がポイントではないかと。それを強く感じたのは(C)と(E)の赤で、心地好さが長く続き、とても印象的なマリアージュでした。
 また、「ハーシーミルクチョコレートキングサイズ」(6)や(7)(8)の輸入チョコは、ほとんどの組み合わせが○で、もしかするとワイン文化の伝統がある欧米で作られているからマリアージュに“幸福感”や“官能性”を感じるのか……と深読みしたくなりました。

Y:その意味では「ワインと料理の色を合わせる」という欧米のセオリーがありますが、その点では個人的に、ベリー系果実の香りがしっかりしたイタリアの(E)が、チョコと最も合わせやすく、相性のいいワインでした。

1杯&1粒の提案に可能性の予感~食事や1日の“締め”、年末年始に


F:今回のマリアージュでは、いわゆるセオリー以外の組み合わせも“発見”できているようですが、どんなシチュエーションで提案したいと思いますか。

K:ワインとチョコのマリアージュは安易に語られがちですが、(6)(7)(8)のような輸入チョコはバレンタイン商材として販売されることも多いので、そのときにワインを絡めることができると思います。特に女性から男性へということではなく、ちょっとしたパーティなどにも応用できますし、ワイン1杯とチョコ1粒といった提案もできると思います。
また、例えば夜の11時くらいのバーでお客さまがリラックスした状態のときに、(B)のようなおいしいシャルドネ種の白ワインとミルクチョコレートをバーテンダーから勧められたら、無理なく受け入れられる感じがします。

Y:個人的にはプレゼントされるとうれしいので、自分へのご褒美に少し良質なチョコレートを買って、ワインと一緒に楽しむことをしたいです。また、家だけでなく、飲食店などでも楽しめるとベストです。

K:ワインって1本買うと重いのですが、飲食店などで締めに1杯&1粒という感じで提供できるといいと思います。

Y:そうですね。“締めチョコ&ワイン”のような感覚で、カジュアルに提案して欲しいですね。

F:私も似たようなことを考えていて、ランチにひと口のワインを提供してくれるレストランがあるのですが、それを少し発展させて、デザート代わりに1杯のワインと1粒のチョコをサーブするのもアイデアかなと。チョコはたくさん食べる菓子ではないと思いますし、口の中でキレがいいのではなく、余韻を楽しむ感じのものだから、少量をデザート代わりに提案してみる。

K:そうすることによって、チョコレート消費の裾野が広がりそうですね。

F:また、週末の午後に“おやつ”として少量を嗜むのもいいし、Kさんが言うように、夜のディープな時間帯に“締め”のような感覚で、コクのあるワインと甘やかなチョコレートを楽しめれば、心地好い眠りに就けそうですし。

K:キャンプの焚き火の前ではないけど、ボーッとしながら、ボーッと飲むのも気持ちいいと思います。

Y:くつろぎながら……ということであれば、年末年始などにワインを1本買って、何日もかけてゆっくり飲むのもいいですね。

K:あまり意気込んで合わせるのではなく、リラックスして飲めるシーンの方が意外な発見がありそうなので、家にチョコレートを備蓄しておくと、アフターパーティのとき、絶好のおつまみに化けそうですね。その意味では、子どもも食べられるミルクチョコの方が活躍してくれるかもしれません。

F:今回はセオリー以外の組み合わせも発見でき、とても有意義でした。次回のマリアージュも興味津々です。