【地酒解体新書第7回】お燗はカンドコと勘所がポイント
地酒ファン必見のおもしろ雑学コンテンツ。 知っているとちょっと使える地酒よもやま話&雑学集。 地酒について、知っていそうで知らなかったこと・知らなかったけど人に聞けなかったこと・知ってたけど「ほんとに!?」と疑っていたものなどまわりの人にちょっと話したくなる地酒にまつわる雑学をを地酒博士が徹底レクチャー!これを読んで、地酒の雑学王になろう!
お燗には、容器の形もポイント
前回からの続きとなりますので、お燗の呼び方についてもう一度復習してみましょう。
気を付けなければならないのは「人肌燗ぬる燗」と「燗冷まし」では味は違ってしまうことで、一般的に「燗冷まし」で美味しいお酒は間違いなく美味しく、逆に言うと、本当に美味しいお酒は「燗冷まし」でも美味しいものです。
ただ「お熱いうちにどうぞ」ってのも事実で、無理して「燗冷まし」にすることはありません。
ではお燗酒の温度はどのように下がるのかと言いますと、これがお銚子徳利の注ぎ口の形や肩のライン、器の肉厚などでマチマチに異なり一概には申せません。また、55℃から35℃ぐらいまでは急激に温度が下がりますが、28℃ぐらいになると一旦落ち着いてしまい、そこから先は、元々が何度のお燗酒だったのかに関係なく一定のスピードで冷めてしまうようです。
「冷酒」で飲む場合と違ってお燗酒で飲む場合は、熱いうちに(ご希望の温度で)飲んでしまうか、「燗冷まし」でも美味しいお酒を召し上がる方が良いようです。
アイデアで変わる、お燗の味。
さて、お燗の付け方にも色々ありますが、やはり湯煎が一番美味しく飲めることに、間違いは無いようです。電子レンジでチンするのも手っ取り早くて便利ですが、この場合はコップの中に割り箸の一本でも良いですから、何かを入れて(立てて)おく方法が効果的です。こうすることで熱の回り方が変化し、コップの中に何も入れない時より極端に味の差が生まれます。
ご家庭でも簡単に実験できますが、コップ3杯にお酒を注いで、1杯はそのまま、2杯目は割り箸を1本入れて、そして3杯目には棒の先に丸い玉のついたマドラーなどを入れ、電子レンジのターンテーブルの上に均等に置いてチンしてみて下さい。
全く味の違うことが即座に分かりますし、奥様を巻き込んで実験すると、その日は3杯飲めますね。(笑)
最も避けていただきたいのが、小さな瓶入りのお酒の栓をしたまま、瓶ごとお湯にドブ付けすることです。
開栓しないままでも、一度お湯に漬けてお酒の温度が上がってしまった場合、その瓶のフタ(栓)は密封機能を失っています。
見た目は栓がされているように見えますが、実は空気が抜けて(外気と通じてしまって)いるのです。
これは、お酒の瓶のフタ(栓)は減圧状態で栓をすることによって閉じているものが多く、中身のお酒の温度を一度上げてしまえば、その時点で瓶の中は陽圧になり、フタが開いていなくても密封密栓がほどこされていない状態になるためです。
具体的に言えば、ベビーフードのフタの密封性を確かめるために「ポン!」と音がすることと同じ原理で、もっと分かりやすく言えば、昔からある牛乳瓶の紙蓋と同じだと思って下さい。すぐにお飲みになるのであれば問題はありませんが、「フタは開いていなくても開いているのと同じ状態」になっているお酒は風味も落ちやすく、劣化しやすいので「瓶のままお燗したらすぐ飲む」ように心がけて下さい。
カンドコの由来って何なの?
料飲店でのお燗は最近ではお燗器を使うことが多いようですが、昔ながらにカンドコ(カンドウコ)を使って湯煎してお燗酒を出してくれるお店も沢山あります。このカンドコという言葉は一般的に使われているものの、一体全体どういう字を書くのか、これについてタイジ株式会社の荒井さんが調べてくれましたのでご紹介します。
カンドコを辞書で調べても記載が無く、「ドウコ」と「カン」で検索しました。
*「ドウコ」=銅製の壷を用いた水時計。漏刻。銅・鋳鉄などで作った湯沸し器。カマドの側壁の中に塗り込み、または長火鉢の灰中に埋めるなどして、そばにある火気を利用して、中に入れた水が沸くように仕掛けたもの。
では、「カン」の字の意味はどうでしょう。
*カン=グタグタになるほどよく煮る。または、酒をあたためる。*「グタグタになるほど煮る」なんて、それはお燗ではないですね。
それでは、「燗」の旁部分の「間」の意味はどうでしょう。
本来は「門+月」と書きます。これは、「門のとびらのすきまから月のみえること」を表す語句で、「二つに分ける」と言う意味を含んでいます。
昔の人は、火加減を門のすきまから月を見るようにそっと細やかに行うことが「燗」なのですと言いたかったのでしょうね。
また本字の「燗」には、「柔らかくなって、枠や形がくずれるさま」とあるので、みなさん、飲み過ぎにはくれぐれもご用心を!
地酒解体新書について
本連載は、国分グループ本社株式会社と全国の有力地酒蔵元との協力により運営して運営する「地酒蔵元会」ホームページ内に掲載されている記事を転載しております。解体新書の他にも地酒に関する様々な情報が記載されておりますので、ぜひアクセスしてみてくださいね。
※地酒解体新書は2008年に公開された記事となります。現在とは異なる表記がある場合もございますのでご了承ください。
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